狭山園では2022年度秋の蔵出し市に、この売り出しのために作られた希少な手捻りの萬古焼きの急須が数点並びます。伝統工芸士の伊藤実山窯で現役85歳で急須を作り続けられている伊藤実山氏による作品です。残念ながら実山氏を含めても現在では萬古焼きを作る職人さんはもう10人もいないということです。
狭山園店主が若き頃に、貯金を貯めて初めて購入した萬古焼き急須が伊藤実山氏の作品だったこともあり、ひときわ思い入れも強く、2008年に実際に三重県まで実山氏を訪ねて、急須作りの様子を取材をしました。
その時の実山氏を実際に取材したストーリー、「私のきゅうすは飾り物じゃない」 2008年10月 狭山園だより「いっぷく」をぜひご覧ください。(PDF記事6ページ目に掲載)
しかしながら、狭山園で取り扱う急須は主に常滑焼の急須ですが、茶器には地域によって作り方、焼き方の違いがあります。その中でも代表的な焼き方である「常滑焼」(愛知県常滑市)と「萬古焼き」(三重県四日市市)にはどんな違いがあるのでしょうか?
常滑焼は朱泥(しゅでい)という赤い土で焼き上げます。焼き温度が高く、焼いている段階で色を混ぜることができ、完成品の色を変えることや、様々な色の土を混ぜ込んで模様を作る「練り込み」という焼き方ができるなど、焼きの工夫を楽しめることが特徴です。一方、萬古焼は紫泥(しでい)と呼ばれる紫色の土が使われています。焼きは素焼きに近く、吸水性があります。常滑焼とは違い、工夫はできにくく、土の収縮の問題で割れてしまうこともあり、加工にはあまり向いていません。ただ、紫の表面に光る艶は美しく、使っている間に馴染みがわいてくるような急須です。
昔から「おいしいお茶は萬古急須でいれろ」と言われていますが、紫泥急須の土は鉄分が多く、また遠赤外線の放射率が高いため、渋みなどが和らいで美味しく淹れられるんだそうです。 本当に良いお茶道具は大切に使えば何十年と使い継がれ、風合いも徐々に変化していくでしょう。この真新しい急須がどのように艶やかに変化してゆくかは急須を購入し、使っている人のまさに特権と言えますね。
こちらの5種類の萬古焼きの狭山園店頭販売は10月1日スタートの秋の蔵出し市となります。販売数量限定のため売り切れ次第再入荷はございません。店頭販売価格はデザインによって異なりますが、6,000円台〜7,000円台のものが並びます。同じデザインでも持ち手の長さが違ったり、微妙に重さも異なる手作りの品ですので、どうぞ店頭でご覧になって自分の手にしっくりとくる一品を見つけてみてください。
以下は今回発売予定の急須のカタログと、動画でも作品のご紹介をしていますのでぜひご覧ください。
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