静岡茶の産地訪問などお茶イベントを企画している”そふと研究会”主催の「早朝の茶市場見学ツアー」にて、新茶シーズン真っ只中の5月2日に静岡の茶市場を見学してきました!
普段は一般の人は入ることのできないこの茶市場、日本でも生産量一位を誇る静岡の茶市場ではどんなことがおこなわれているのでしょうか?
ここは、お茶を売りたい農家や生産者、またその代わりをする農協の職員たちがお茶のサンプルを茶市場に持ち込み、茶の仕上げ業者や卸問屋がそのお茶を目利きして買い付けをする場所です。とは言っても勝手にどんな茶業者でも売買ができるわけではなく、新規に買い手になったり、売り手になったりするためにはキチンと申し込みをし、承認を受けてからでないと参入ができません。信頼を置ける取引をするための重要なシステムです!
そしてポイントなのが、ここで買い手が買い付ける一番茶は私たちが飲んでいる製茶されたお茶ではなく、半加工の”荒茶”なので、つまり買い手側がまだ完成品ではない”お茶の原料”を買うことになります。そのお茶を自分たちで仕上げして、火入れや合組して仕上げ茶(販売用)にしていくため、慎重にお茶の見極めをしなければいけません。時には何百キロ、何百万円という単位で買い付けをします。一年で販売する用の荒茶をこの一番茶の時期の市場で買い付けするのですから、失敗はできない緊張と真剣さが漂う現場です。意外だったのが、実は静岡茶市場といっても、県外からのお茶も売りに出されていて、鹿児島や高知県のお茶なども並んでいました。
静岡茶市場では生産者と茶商、仲介する茶市場職員が5つ玉のそろばんを弾いて値決め交渉をする「相対取引」が行われています。この相対取引という売買方式は結構珍しく、お茶を高く売りたい生産者と安く買いたい茶商の攻防、そして双方の言い分を聞きながら落としどころを探り取引を成立させる茶市場職員の様子を垣間見ることができます。ちなみに市場にいる人はみんな帽子をかぶっていますが、売手(お茶を生産する茶農家さんや農協の職員)は緑色・買手(仕上げ加工をする卸問屋や茶商など)は青色 ・茶市場社員は黄色・その他行政等の関係者は専用色があるそうです。
朝6時半に開始のベルが鳴り、売買スタート!!らしいのですが、実際にはもっと早朝から買い手は買い付けるお茶をじっくりと品定めしています。周りには見えないようにそろばんを使って、親値(売値)を元に値引き交渉をしている様子もちらほら。サンプルの荒茶がずらりと並ぶ机の端に、拝見場と言われるお茶の欠点や特徴をカップに入ったお茶にお湯を差して内質する水場のようなところもあり、常にカンカンの熱湯が入ったヤカンを茶市場ベテランの年配の女性たちが滞りないようにテキパキと用意して回っています。荒茶を手に取り、お茶の質感、色、香り、そして形状などを見ます。その後そのお茶を熱湯で浸出して、製造上の欠点がないか、仕上げ茶として出来上がった時のお茶の味わいや香り、色味などもしっかりと目利きしていくのです。いいお茶からどんどん買われていってしまうので、あまり長時間かけてじっくりと見ている買い付け業者はいません。茶市場も5月上旬のスタートから数日は毎日色々な一番茶の荒茶が競りに出されますから、毎日早朝に通っていいお茶を獲得しなければいけないため、本当に経験と判断力がものをいう現場なのだと思いました。
個々の商談成立の際には、手締めといって売り手と買い手、双方が「パン!パン!パン!」と手を叩きます。最近はわざわざやる人も少なくなった〜と市場の職員さんはいっていましたが、この日は私たち見学者のため?に数カ所から手締めが聞こえてきました。
その他、オークション形式で出品されている希少な品種のお茶や、ちょうど買い付けにきていた市内の問屋さんによる荒茶の見方など、産地別、品種別の一番茶の見比べの様子も見せていただくことができました。茶市場で買付されるお茶は一種類のお茶だけではなく、複数の荒茶を買い付けて合組(ブレンド)されます。出来上がるお茶の香りや色、そして値段も加味して真剣に買い付けをしなければならないため、茶業者にとっては真剣な売買の場所となるんですね。売買開始のベルが鳴ってものの数十分で取引が終わって、各問屋さんですぐに仕入れた一番茶の荒茶の製茶が始まります!
その後、市場の社長さんや、買い付けにきていた市内の製茶師さんから荒茶に熱湯を注いで品質をみる内質審査や、荒茶の見方、いろんな種類のお茶の外観審査体験もあり、この市場、そしてこの新茶時期ならではの貴重な体験をすることができました。新茶の茶殻をオリーブオイルと塩でいただき、静岡の一番茶の新鮮な美味しさを噛み締めることができました。
狭山園でもお馴染みの前田文男茶師や、まごころ銘茶シリーズの松田茶師もここで荒茶を買い付け、自社の工場で仕上げ茶に加工します。多くの人の手を介して美味しく、安全に、品質の良いお茶が出来上がって製品となります。
静岡茶市場の詳しい情報は公式ホームページをみると色々な情報が載っています。